2024年サッカー界の個人タイトルにおいて最も権威ある賞を受賞したのはスペイン代表のロドリ。
受賞後は色々と物議を醸す結果となった今回のバロンドールについて考えてみた。
いま一度バロンドールについて議論してみよう。
そもそもバロンドール(Ballon d’Or)は、フランスのサッカー専門誌『フランス・フットボール』が主催する年間最優秀選手賞で1956年に創設。
この賞は世界で最も権威あるサッカー賞として認知されている。
毎年世界中の記者やサッカー関係者によって選考が行われ、その年に最も優れた活躍を見せた選手が表彰。
選考対象者について
まずは歴代受賞者をあらためて見直してみよう。
年度 | 受賞者 | 国籍 |
---|---|---|
2023 | リオネル・メッシ | アルゼンチン |
2022 | カリム・ベンゼマ | フランス |
2021 | リオネル・メッシ | アルゼンチン |
2020 | 受賞なし*コロナの影響のため | — |
2019 | リオネル・メッシ | アルゼンチン |
2018 | ルカ・モドリッチ | クロアチア |
2017 | クリスティアーノ・ロナウド | ポルトガル |
2016 | クリスティアーノ・ロナウド | ポルトガル |
2015 | リオネル・メッシ | アルゼンチン |
2014 | クリスティアーノ・ロナウド | ポルトガル |
2013 | クリスティアーノ・ロナウド | ポルトガル |
2012 | リオネル・メッシ | アルゼンチン |
2011 | リオネル・メッシ | アルゼンチン |
2010 | リオネル・メッシ | アルゼンチン |
2009 | リオネル・メッシ | アルゼンチン |
2008 | クリスティアーノ・ロナウド | ポルトガル |
2007 | カカ | ブラジル |
2006 | ファビオ・カンナバーロ | イタリア |
2005 | ロナウジーニョ | ブラジル |
2004 | アンドリー・シェフチェンコ | ウクライナ |
2003 | パベル・ネドベド | チェコ |
2002 | ロナウド | ブラジル |
2001 | マイケル・オーウェン | イングランド |
2000 | ルイス・フィーゴ | ポルトガル |
1999 | リバウド | ブラジル |
1998 | ジネディーヌ・ジダン | フランス |
1997 | ロナウド | ブラジル |
1996 | マティアス・ザマー | ドイツ |
1995 | ジョージ・ウェア | リベリア |
1994 | フリスト・ストイチコフ | ブルガリア |
1993 | ロベルト・バッジョ | イタリア |
1992 | マルコ・ファン・バステン | オランダ |
1991 | ジャン=ピエール・パパン | フランス |
1990 | ローター・マテウス | ドイツ |
1989 | マルコ・ファン・バステン | オランダ |
1988 | マルコ・ファン・バステン | オランダ |
1987 | ルート・グーリット | オランダ |
1986 | イーゴリ・ベラノフ | ソ連 |
1985 | ミシェル・プラティニ | フランス |
1984 | ミシェル・プラティニ | フランス |
1983 | ミシェル・プラティニ | フランス |
1982 | パオロ・ロッシ | イタリア |
1981 | カール=ハインツ・ルンメニゲ | 西ドイツ |
1980 | カール=ハインツ・ルンメニゲ | 西ドイツ |
1979 | ケビン・キーガン | イングランド |
1978 | ケビン・キーガン | イングランド |
1977 | アラン・シモンセン | デンマーク |
1976 | フランツ・ベッケンバウアー | 西ドイツ |
1975 | オレグ・ブロヒン | ソ連 |
1974 | ヨハン・クライフ | オランダ |
1973 | ヨハン・クライフ | オランダ |
1972 | フランツ・ベッケンバウアー | 西ドイツ |
1971 | ヨハン・クライフ | オランダ |
1970 | ゲルト・ミュラー | 西ドイツ |
1969 | ジャンニ・リベラ | イタリア |
1968 | ジョージ・ベスト | 北アイルランド |
1967 | アルベルト・フローリアーン | ハンガリー |
1966 | ボビー・チャールトン | イングランド |
1965 | エウセビオ | ポルトガル |
1964 | デニス・ロー | スコットランド |
1963 | レフ・ヤシン | ソ連 |
1962 | ヨゼフ・マソプスト | チェコスロバキア |
1961 | オマール・シボリ | イタリア |
1960 | ルイス・スアレス | スペイン |
1959 | アルフレッド・ディ・ステファノ | スペイン |
1958 | レイモン・コパ | フランス |
1957 | アルフレッド・ディ・ステファノ | スペイン |
1956 | スタンリー・マシューズ | イングランド |
やはり名前を見ただけで思わず唸ってしまう歴代の名手たちがズラリと並ぶ。
各世代間によって懐かしさをおぼえる選手が違うのも歴史を感じる名誉ある個人賞であることがわかる。
バロンドールの選考対象者は、世界中のプロサッカー選手。
かつては欧州圏内の選手のみが対象だったが1995年からは欧州のクラブに所属する全選手、2007年以降は全世界のサッカー選手が対象。
これにより南米やアジア、アフリカの選手も選考の対象となり、グローバルな視点で評価?が行われるようになった。
選考方法
バロンドールの選考プロセスは、世界各国のサッカー専門ジャーナリストやサッカー関係者から成る投票者によって行われる。
彼らは、シーズンのパフォーマンスを基にして候補者リストから順位を付けて投票。
各投票者が5人の選手を選び、それぞれに6点(1位)、4点(2位)、3点(3位)、2点(4位)、1点(5位)という形で点数が与えられる。
全投票者の点数を合計し、最も得点の高い選手がバロンドールを受賞。
*ちなみに日本人ジャーナリストで投票権を持つ方は田村修一氏のみ
選考基準
バロンドールの選考基準は、以下の3つに基づき選考されている。
- 個人成績
選手の個人成績が最も重要視されている。
ゴール数やアシスト数、出場試合数など、シーズン中における選手のパフォーマンスや貢献度が評価の主な基準となる。
また、重要な試合や大会(例えば、ワールドカップ、UEFAチャンピオンズリーグ、コパ・アメリカ、ユーロなど)での活躍も高く評価されるポイント。
特に大舞台での勝利への貢献は、選手の価値が最大限に高まる。
- チームの成績
個人の成績だけでなく、所属チームの成績も評価の対象。
選手が所属するクラブや代表チームが優勝や好成績を収めた場合、その選手が重要な役割を果たしたとみなされる。
チームとしての主要タイトル獲得は、選手の実力やリーダーシップを間接的に証明する要素とみなされ、バロンドール受賞のための重要な条件の一つ。
- プレースタイルやフェアプレー
選手のプレースタイルや試合におけるフェアプレーの姿勢も選考基準。
華麗なプレーやチームメイトをサポートするプレースタイル、そしてスポーツマンシップな行動などが、評価に加味される。
*サッカー界で尊敬される存在であることが、バロンドールの受賞に有利に働く場合もあるが過去振り返ってみても私生活において破天荒な選手が受賞されたり、誰からも尊敬される選手が受賞していなかったりと議論されることは多々ある。
選考基準の課題
バロンドールは歴史とともにその評価基準や対象範囲が少しずつ変化。
特に、近年はクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)やリオネル・メッシ(アルゼンチン)といったスター選手が長期間にわたり受賞してきたことから、公平性や多様性に関する議論が増加。
また、ポジションの偏り(FW登録の選手や攻撃的MFの選手が多く受賞する傾向)や、代表チームよりクラブチームの成績に影響されやすい点も課題として指摘されている。
守備的MFやDF、GK登録の選手達が評価されにくい現状に改善を求める声も多い。
*その結果、GKとして史上唯一バロンドールを受賞したレフ・ヤシン(元ソビエト連邦)にちなんでヤシン・トロフィーが2019年に創設され歴代バロンドール受賞者が審査員となり選定されている。
女性部門の設立
2018年には、女性選手を対象とした「女子バロンドール」が創設され、男女問わずサッカー界で最も優れた選手を表彰する場が整えられた。
これにより、女子サッカーの発展と評価が促進され、より多様な視点から選手が評価されるようになった。
ロドリの受賞は妥当か?
ヴィニシウス(ブラジル代表)受賞が濃厚と言われていただけに本人はもとよりクラブ側も相当ショックだったようで、やがてそれは怒りに変わった模様。
見解としてクラブはヴィニシウスに気遣い主催者、投票者に抗議の意味も込めての態度だったように思える。
最近の傾向を見ると投票者はそろそろ比較的地味な選手(ロドリは守備的MFもしくは時折CBもこなすマルチタイプのMF)を選考しておこうと考えたのかもしれない。
地味だがプレーは堅実で実力者MFの受賞者で言えばモドリッチ、ネドベドが真っ先に上がる。
確かにロドリはいい選手だが最近の傾向を考慮するとロドリよりDFのカルバハル(現スペイン代表・レアル・マドリード所属の右SB)の方が妥当だったのではないか?
スペイン代表としてユーロ2024の優勝に貢献、2023−24シーズンのCL制覇のレアル・マドリード所属でバリバリのスタメンを張る超実力者は今でも過小評価され続けている。
銀河系軍団の中では一層地味に見えるがチームには欠かせない選手で監督からの信頼も厚い。
そんな好選手は今シーズンリーグ戦にて膝の大怪我を負ったせいで約1年間の戦線離脱を余儀なくされる見込み。
1年間プレー機会を見ることもなく選手の寿命が伸びているとはいえ現在32歳のDFはレギュラーポジション獲得が最も困難なレアル・マドリードで復帰後もスタメンを張ることはあるのか?
この好選手がこのまま第一線の表舞台から消え去っていきそうな一抹の不安を覚える。
まとめ:やはりバロンドールは今後も最も価値のある個人賞
バロンドールは、サッカー界で最も偉大な栄誉な個人賞であるが選考基準は年々進化を続け、サッカー界全体を反映するような選出を目指しているのか?
はなはだ疑問ではあるが日本人選手がこの賞を受賞する日はくるのか?
ヨーロッパでプレーする選手が当たり前になりつつある現在の日本のサッカーファンはこの一点にフォーカスしていると思う。
可能性を探るならまずはビッグクラブへの移籍、そしてコンスタントにスタメンで出場し続ける実力者が最低条件となるであろう。
*最後にロドリについて以下説明文
ロドリ(本名:ロドリゴ・エルナンデス・カスカン、Rodrigo Hernández Cascante、通称「ロドリ」)は、スペイン代表でプレーするミッドフィルダー。簡潔に説明するとプレースタイルやサッカー知識、戦術理解力が高く評価されている選手。1996年6月22日にスペインのマドリードで生まれ、身長は191cmという高身長でありながら繊細なボールタッチとゲームメイク能力を持ち、守備的な役割を担いながらも攻撃にも参加し貢献する。時折監督の指示によりCBなどもこなす万能型MF。現代サッカー選手らしい2つ、3つのポジションをこなすマルチタイププレーヤーで1試合で1つのポジションだけで試合を終えることがほぼない。
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